うつ病をはじめとする心の病は、「脳が関係している」ということは、あなたもよくご存じだと思います。確かに、「心の病」は「脳の病」とも言われますし、処方される抗うつ剤も脳に作用するものが多いです。
脳が何らかの異常をきたしているから心の病になるわけですが、そもそもなぜ脳の不調は起こってしまうのでしょうか?
ゆき
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【後編】「腸」大切!うつ病と腸の意外な関係!腸のご機嫌で心のご機嫌も決まる
腸は第二の脳
近頃、本屋さんを覗くと腸に関する書籍がたくさん並んでいますね。テレビの健康番組も腸について多く取り上げていて、「腸と健康」の関係が幅広く知られるようになりました。
最近のうつ病や心の病の研究では、「腸の健康状態が心の健康状態を左右する」ということも分かってきました。そのせいか「腸は第二の脳」とも言われます。
心の病だけでなく、腸は様々な病気と深く関わっていることも分かっています。
ゆき
腸は自ら考える
まず、腸は「腸神経系」という特有の神経系を持っていて、脳からの指令がなくても自分で動くことができるんです!しかもその神経の数は脳に匹敵するぐらい!
そして驚きなのが、食中毒や腐ったものを食べてお腹を壊したときの腸の活躍ぶり!
例えば、腐った食品とは知らずに、私達(脳)が「おいしそう!食べるー!」と判断して食べたとします。
すると腸が毒物を見付けて、「これ腐ってるよ!外に出して!」と、免疫細胞に命令し、体の外に出そうとします。だから下痢や嘔吐をしてしまうんですね。
こうして腸は私達の食の安全を守ってくれているわけです。
ゆき
また、「脳死」と呼ばれる状態になっても、生命維持装置で呼吸と血液の循環が行われれば、人間は生きていけます。
ゆき
心の病と腸の関係
ゆき
幸せホルモン「セロトニン」と腸の関係
うつ病さんに欠かせない幸せホルモン「セロトニン」の多くを保有しているのは、体のどの部分だと思いますか?
そう…実はまさかの腸内です!
セロトニンと腸内細菌
「じゃあ腸とうつ病は関係ないじゃん!」と思われるかもしれませんが、実はこのセロトニンを作るためには「トリプトファン」という必須アミノ酸が必要です。
トリプトファンは食事からしか摂取することができず、更にトリプトファンからセロトニンを生成するには様々な栄養素が必要になってきます。
そこで重要なお仕事をしてくれるのが「腸内細菌」。いわゆる善玉菌とか悪玉菌とかいうやつですね。
腸内細菌がうまく働いてくれることで、セロトニンの素になるトリプトファンが出来上がるのです。
腸内で生成されたトリプトファンは脳に運ばれます。そして脳内で分解されて初めて、脳内にセロトニンが誕生するというわけです。
しかし、腸内環境が乱れて腸内細菌の働きが鈍くなると、うまくトリプトファンを生成できず、セロトニンも不足してしまうと考えられています。
どんどん進む、腸と心の病の研究
国立精神・神経医療研究センターでは、腸内細菌とセロトニンの関連性に注目した実験がいくつも行われています。
例えば、うつ状態にしたラットの腸内環境を整えてあげると、うつ状態が改善したとの研究結果や、うつ病の人は健康な人と比べて腸内の善玉菌の数が少なく、善玉菌の数が一定数以下だと、うつ病である割合が高くなるとの研究結果も出ているんですよ。
これからもっともっと、腸とうつ病の関係は明らかになってくるでしょう。
ゆき